田島 信元 (白百合女子大学教授)

　乳幼児は一見幼く、頼りなげに見えます。しかし、幼くても、素晴らしい能力と人格を持った存在なのです。乳幼児は生誕直後から、他者とのやりとりを通して様々なことを学習するとともに、積極的に自己発信することを通して自立への歩みを続けています。このような子どもたちの成長・発達には、周りの人々との真摯な関わりを通して他者との間に心の絆を紡いでいく力と、そうした社会的交流のなかで自ら積極的に学んでいく力とからなる先天的能力「育つ力」の発揮が中核となります。
　しかし、その発揮は他者との関わりを通して初めて実現されるため、他者の持つ発達支援力「育てる力」との、葛藤をも伴う調整・調和の過程が必須となります。まさに“支援なくして発達なし！”ですが、逆に「育つ力」を無視した支援も“百害あって一利なし！”なのです。発達障害児への支援もこの視点の欠落は致命的となりましょう。
　こうした「育つ力」と「育てる力」との葛藤・調和の連鎖によって、子どもの生活世界の拡大・深化、その結果としての発達段階の形成、ひいては生涯にわたって発達し続ける生涯発達の過程が生じてくるのです。
　現代心理学「発達と支援 胎児期〜幼児期」は、乳幼児期という子どもたちが生涯発達の基盤づくりを達成する重要な時期の発達のダイナミズムについて、その特徴や様相を検証、解説する映像教材です。最先端の知見を実験や再現シーン、図表やグラフを用いて分かりやすく示し、児童期以降の人生に大きな影響を及ぼす乳幼児の心理的発達に迫ります。