「よばい」
|
|
輝くばかりに成人したかぐや姫の噂は国中に広がる。身分の高低を問わず男たちが求婚に訪れる。
昼だけでなく夜になっても訪れて、中をのぞいたり、土塀に穴をあけたりする始末。
この時からこうした行為を「よばい」(夜這い)と言うようになったとか。
|
|
「恥を捨つ」
|
仏の御石の鉢を探す石作の皇子は山寺に安置されていた真っ黒にすすけた鉢を取ってくる。かぐや姫の前に差し出すが見抜かれ、鉢を返される。返された鉢を捨ててから「白山にあへば光のうするかとはちを捨ててもたのまるるかな」の歌を厚かましくも返した。
鉢を捨ててからも言い寄ったことがもととなって、厚かましいことを鉢と恥とをかけた洒落で「恥を捨つ」と言うようになったとか。 |
「たまさかる」
|
蓬莱の玉の枝をかぐや姫に差し出した庫持の皇子は、工匠たちの出現により嘘が知れてしまう。「一生のうちでこれ以上の恥はない、姫を得る事ができなかったばかりではなく、これを知った人々が思うであろうことがどんなにか恥ずかしい」といって深山に入り、何年も姿を見せなかった。
玉の枝にことよせて、あらわれないことを「たまさかる」(玉さかる・魂離る)と言うようになったとか。
|
|
|
「あえなし」
|
右大臣阿倍御主人は火鼠の皮衣を中国の貿易商に頼んで、高いお金を出して買い、かぐや姫の前に差し出す。本物なら燃えないはずのものが焼いて試してみるとめらめらと燃えてしまい、偽物の皮だったことが判明し、阿倍御主人の求婚は失敗に終わる。
人々は、これを聞いてやり遂げず、がっかりすることを「あえなし」(阿倍なし)と言うようになったとか。 |
「あなたえがた」
|
龍の頸の玉を手に入れようと南の島を目指した大納言大伴御行は、激しい嵐にあい、船酔いの末、明石の松原にうちあげられる。南の島ではなかったことに気が付くが、両目は李(すもも)のように腫れていた。人々が言うには、「龍の頸の玉を取ってきたのか」「いや、両目に李のような玉を付けていたよ」と言うと、「あなたえがた(ああ、食べ<耐え>られない)」と言ったことから、常識はずれの行動を「あなたえがた」と言うようになったとか。
|
「かいなし」
|
|
中納言石上麿足は、燕の子安貝を取ろうと自ら篭に乗って燕の巣に近づき、手を差し入れて物をつかむ。人々がすばやく篭を下ろそうと綱を引くが、中納言は仰向けに落ちてしまう。「如何ですか」と人々がたずねると息絶え絶えに「だいじょうぶ。子安貝を握っているからうれしい」といって手を広げてみると燕の古い糞であった。
それを見て「あな、かひな(貝無)のわざや」といったところから、期待はずれのことを貝と効(かい)を掛けて「かいなし」と言うようになったとか。 |
|
「ふじの山」
|
帝はかぐや姫からもらった手紙と不死の薬の壺を天に一番近い、駿河の国にあるという山で燃やすよう命じる。
その山に多くの武士(つわもの)(士)が登り、士に富むことから、その山をふじ(富士)の山と呼ぶようになったとか。
|
|
|